日本酒選び入門 ~ ラベルからわかること ~
日本酒のラベルには、「清酒の製法品質表示基準」で定められた必要記載事項から任意記載事項、そのほか美味しく味わうための情報や製造方法など、その日本酒の味わいをイメージするための情報が記載されています。
ここでは、ラベルに記載されている用語について解説をしています。日本酒選びの一助となれば幸いです。
特定名称酒
日本酒は酒税法により「特定名称酒」と「普通酒」に分けられています。
特定名称を表示できるのは「清酒の製品表示基準」の要件を満たす場合に限られます。
後述しますが「特定名称酒」には、「吟醸酒」「純米酒」「本醸造酒」があり、「清酒の製品表示基準」に定められた原料や製造方法等の違いにより8種類に分類され日本酒を選ぶうえでのポイントとなっています。
「普通酒」は「特定名称酒」以外の日本酒をいいます。
「純米酒」「吟醸酒」「本醸造酒」の違い
「純米酒」は米、米麹、水だけで造られた日本酒です。
「吟醸酒」は精米歩合が60%以下の米と米麹、水、さらに醸造アルコール(白米総重量の10%以下)を添加して「吟醸造り」という製法で造られます。精米歩合が50%以下の「吟醸酒」は「大吟醸酒」と呼ばれます。
吟醸造りとは、吟味して醸造することをいい、伝統的に、よりよく精米した白米を低温でゆっくり発酵させ、かすの割合を高くして、特有な芳香(吟香)を有するように醸造することをいいます。
吟醸酒は、吟醸造り専用の優良酵母、原料米の処理、発酵の管理から瓶詰・出荷に至るまでの高度に完成された吟醸造り技術の開発普及により商品化が可能となったものです。
「本醸造酒」は精米歩合が70%以下の米と米麹、水、さらに醸造アルコール(白米総重量の10%以下)を添加して造られます。
分類 | 精米歩合 | 原料 | 醸造アルコール |
---|---|---|---|
純米酒 | - | 米、米麹 | - |
吟醸酒 | 60%以下 | 米、米麹 | 添加 |
本醸造酒 | 70%以下 | 米、米麹 | 添加 |
醸造アルコールの添加は白米総重量の10%以下。
特定名称酒の種類
「純米酒」「吟醸酒」「本醸造酒」は、原料や精米歩合、製造方法などの違いによって8種類に分類されています。
分類 | 特定名称 | 精米歩合 | 原料 | 醸造アルコール |
---|---|---|---|---|
純米酒 | 純米酒 | - | 米、米麹 | - |
純米吟醸酒 | 60%以下 | 米、米麹 | - | |
純米大吟醸酒 | 50%以下 | 米、米麹 | - | |
特別純米酒 | 60%以下(または特別な製造方法) | 米、米麹 | - | |
吟醸酒 | 吟醸酒 | 60%以下 | 米、米麹 | 添加 |
大吟醸酒 | 50%以下 | 米、米麹 | 添加 | |
本醸造酒 | 本醸造酒 | 70%以下 | 米、米麹 | 添加 |
特別本醸造酒 | 60%以下(または特別な製造方法) | 米、米麹 | 添加 |
麹米の使用割合は15%以上(麹米とは米麹の製造に使用する白米をいいます。蒸した麹米に麹菌を付着させ、増殖させたものが米麹となります)。
醸造アルコールの添加は白米総重量の10%以下。
特定名称は、そのお酒の味わいをイメージさせてくれる指標となりますが、精米歩合が58%の純米酒や、精米歩合が50%以下の吟醸酒があったり、「大」「特別」を名乗っていない銘柄もあります。特定名称だけでなく精米歩合もチェックするとよいです。
必要記載事項
「清酒の製法品質表示基準」で定められた必要記載事項には、「品目」「原材料名」「内容量」「アルコール分」「製造者の氏名又は名称」「製造場の所在地」「保存または飲用上の注意事項」「二十歳未満の者の飲酒防止の注意」「原産国名や外国産清酒を使用したものの表示(輸入品の場合)」があります。
そのうち、「品目」「原材料名や原材料名とともに表示する精米歩合」「アルコール分」「保存または飲用上の注意事項」などは味わいをイメージさせてくれる項目となります。
品目
清酒もしくは日本酒。
原料の米に国内産米のみを使い、かつ、日本国内で製造された清酒に限り「日本酒」と表示してもよいことになっています。
原材料名(特定名称酒は精米歩合も)
原料名のほか、特定名称を表示する清酒の場合は原材料名の表示の近接する場所に精米歩合を併せて表示します。
例:純米大吟醸酒
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産)
精米歩合:45%
例:純米酒
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産)
精米歩合:70%
例:吟醸酒
原材料名:米(国産)、米こうじ(国産)、醸造アルコール
精米歩合:55%
精米歩合は、日本酒の味を左右する重要な要素です。
精米歩合が小さいほどフルーティーですっきりとした軽快なお酒となり、値段も高くなる傾向がります。そのため表ラベルに「磨き〇割り○分」とか精米歩合の数字を大きく表示している日本酒もあります。
精米歩合とは、白米のその玄米に対する重量の割合をいいます。精米歩合60%というときには、玄米の表層部を40%削り取ることをいいます。
米の胚芽や表層部には、たんぱく質、脂肪、灰分、ビタミンなどが多く含まれ、これらの成分は、清酒の製造に必要な成分ですが、多過ぎると清酒の香りや味を悪くしますので、米を清酒の原料として使うときは、精米によってこれらの成分を少なくした白米を使います。ちなみに、一般家庭で食べている米は、精米歩合92%程度の白米(玄米の表層部を8%程度削り取る。)ですが、清酒の原料とする米は、精米歩合75%以下の白米が多く用いられています。特に、特定名称の清酒に使用する白米は、農産物検査法によって、3等以上に格付けされた玄米又はこれに相当する玄米を精米したものに限られています。
精米歩合が大きいお酒が小さいお酒くらべて美味しくない訳ではありません。精米歩合が70%程度の雑味を感じる純米酒を好む方もいらっしゃいます。
飲み比べながら、自分の好みの味を見つけてみてください。
アルコール分
一般的な日本酒は、15%~16%ですが、原酒の場合18%前後で20%以上のものもあります(日本酒は22%未満になるよう定められています)。
最近は、低アルコールタイプの13%程度(ワインくらい)の日本酒も増えてきています。
保存または飲用上の注意事項
精製後に加熱処理をしないで出荷する生酒のような清酒には、保存または飲用上の注意事項を記載する必要があります。
生酒などは「要冷蔵」となっています。一般家庭の冷蔵庫ではなかなか難しいですが推奨温度が記されていることもあります。
任意記載事項
原料米の品種名
原料米のうちその使用割合が50%を超えるものについては、使用割合と合わせて品種名を表示することができます。
例:山田錦100% 美山錦100%など
同一銘柄でお米の違う日本酒もあったりします。呑み比べて好みのお米を探してみるのもよいかもしれません。
(清酒の)産地名
清酒のすべてがその産地で醸造されたものである場合にかぎり産地を表示することができます。
日本酒は、地域ごとに味わいに特徴があります。産地をチェックしながら呑み比べてみると、自分にあった日本酒の傾向が分かってくるかもしれません。
産地からの申請で、国税庁長官の指定を受けることで産地名を名乗ることができる地理的表示(GI:Geographical Indication)とはことなります。
貯蔵年数
1年以上貯蔵した清酒に、1年未満の端数を切り捨てた年数を表示できます。
醸造年度が、2015BYと表示されていたり、2015年度と表示されていたり、貯蔵年数で5年古酒と表示されていたりして複雑です。詳しくは酒屋さんに尋ねるのがよいでしょう。
製造時期の表示
瓶詰など容器に入れた日を製造時期を示す文字のあとに表示します。
醸造年度(2015BYや2015年度)とは違いますので注意が必要です。
特徴を示す語句
原酒、生酒、生貯蔵酒、無濾過、山廃、生酛、樽酒、冷やおろし(あきあがり)など
- 原酒
- 醪を搾ったのち(上槽後)水を加えないお酒で、アルコール度数が18%前後で20%以上のものもあります。アルコール度数1%未満の加水調整は差支えないことになっています。
- 生酒
- 醪を搾ったのち(上槽後)、貯蔵、瓶詰のタイミングで一切火入れを行わないお酒
- 生貯蔵酒
- 醪を搾ったのち(上槽後)、火入れせずに貯蔵し、瓶詰のタイミングで一度だけ火入れを行ったお酒
- 生詰め酒
- 醪を搾ったのち(上槽後)、火入れをして貯蔵し、瓶詰のタイミングでは火入れをしないお酒
- 無濾過
- 滓引き(おりびき)後に残ったおりを除去する濾過処理を行わなかったお酒。
- 生酛
- 乳酸菌を育てるために櫂という道具で米や米麹をすりつぶす「山卸し」という作業で作った酛(酒母)で醸造されたお酒。
- 山廃
- 櫂という道具で米や米麹をすりつぶす「山卸し」を廃止して作った酛(酒母)で醸造されたお酒。乳酸菌は別の方法で発生させます。
- 樽酒
- 主に杉の樽に一定機関貯蔵され木の香りがついたお酒。
- 冷やおろし(あきあがり)
- 春に搾ったお酒に火入れをして貯蔵し夏の間に熟成させ、外気と貯蔵庫の中の温度が同じくらいになる秋に出荷されるお酒
これらの語句は、「無濾過生原酒」「無濾過原酒」「生原酒」など組み合わせて表現されたりします。
まとめ
ラベルの情報や陳列棚に掲載されている酒屋のメッセージ、ネットの情報を見ながら日本酒を選ぶのも楽しいですが、
酒屋の店主や店員さんに
「日本酒を買うのは初めてなんですが・・・」とか
「温めて呑んでみたいんですが・・・」とか
「今晩はおでんを食べるんですが・・・」とか
と話してみると色々教えてもらえます。
有名な銘柄でなくても美味しいお酒はたくさんありまし、ぜひ飲んでみてくださいというお酒を紹介してもらえたりもします。
日本酒を楽しむためにある程度の知識は必要ですが、少しの知識となじみの酒屋を数軒見つけることから始めるのもよいかもしれません。そのうち呑みたい銘柄を求めて酒屋を探すようになったり、旅行したくなったりしてきます。
日本酒を扱う酒屋は、清潔で綺麗なのだけれど窓もすくなく店内が薄暗かったり、窓があってもシャッターが半分しまっていたりするお店もあります。これはお酒に日が当たらないようにしているためで、お酒の品質を落とさないための配慮なのです。入りづらいお店だなとか思わないでください。日光や蛍光灯の光を避けてお酒を大切の保管しているお店です(紫外線を含まないLED証明は大丈夫なのだそうです)。